精神科の産業医が主治医になるべきか?:日本精神神経学会in 横浜

先週木曜日から土曜日まで精神神経学会に参加しました。
年々産業医研修のシンポジウムが増えてます。
ストレスチェック義務化法案が可決した今、施行前に企業からの問い合わせも増えてます。
益々企業におけるメンタルヘルス対策の責務が重くなってきたことは間違いありません。
学会の産業医向けシンポジウム中でメンタル職のあるべき姿のような話がありました。
私自身普段から考えていることと同じだったので紹介します。

精神科の産業医が主治医になるべきか?
これについては産業医科大の教授が「絶対ノー」と即答。
私も同感です。
現在、厚生労働省の復職ガイドラインに則り復職対応しておりますが、その中にもあるよう、「主治医の復職判断」の後に「産業医の判断」そして最終的には「企業の判断」となります。
主治医の判断はどうしても患者さん寄りになります(当該社員の就労状況日常生活が安定していることにより復職判断しがち)
私が主治医として携わる場合も、ついつい患者さんの出社意欲に負けて復職の診断書を書いてしまいがちです。
しかし、実際に出社してみると、継続出来ないことが多く、辛い思いをする社員さんも多いものです。
復職後1か月で40%が再休職になるというデータもあります。
私自身、企業で復職のお手伝いをしてますと最初の1か月を乗り切れるかどうか、がポイントだと実感します。
これは、「日常生活」と「会社での社会生活」のギャップが想像以上に大きいからです。
このような質の異なる判断をしなければならない医師は、異なる二役です。
これを一人の判断に委ねることは倫理的にも避けるべきです。

また、会社での不適応を理由に上司から精神科産業医面談命令が下ったという例もあります。
産業医面談の中で、発達障害、生育上の問題があると指摘され、本人の希望がないにもかかわらずその医師のクリニックで診療継続、カウンセリングを半ば強要されたという話でした。
これは職場の産業医によるパワハラです。。
職場を納得させるためには主治医の指示を聞かなければならない状況に置かれていたわけです。
さらに、病名など、職場に伝えてほしくない旨を伝えても、本人としては本来なら、主治医と産業医という二重のバリアで守られるべきところが一重になってしまうのです。
このような悪意があって主治医になる医師は少ないとは思いますが、このような危険性と裏合わせになるため、私自身、産業医兼主治医になることは極力避けてます。
身体疾患の場合、主治医が職場にいることは大変利便性が高いと思いますが、メンタル疾患の扱いは注意を要するのです。