経営にプラスになるメンタルヘルス活動とは・・・

今日は日本生産性本部の「組織ソリューション研究会」に参加してきた。
「職場のいきいき」をどう作るかをヘルスセクターだけでなくノンヘルスセクタ―のアプローチから模索するという話で、東京大学の精神保健の川上先生と一橋大学の守島先生のお話があった。
参加者は人事部がメインと予想していたが、その他労働組合の方もいらした。
そんな研究会に産業医の私が参加していいのか?と思いながら参加した。
それには深い理由があった。
産業医活動の中で、数年前よりどうしたらメンタル不調者が減少するのか?と常に考えながら仕事している。
今のままでは単なる「もぐらたたき」に過ぎない。
次々と増えるメンタル不調者の面談に追われる毎日・・。
壊れた橋を渡る人が怪我をした後に治すのが、臨床家の仕事、
壊れた橋の前に看板を立てて、渡らせないようにするのが公衆衛生の仕事。
また、壊れた橋を治すのも予防医学の一つ。
こんな話は医者なら一度は聞いたことはあると思う。
公衆衛生で学位を取った私としては、目の前の患者さんを助けてあげたいと思う臨床家以上に予防的視点がどうしてもはずせない、そんな習性がある。
目の前の社員の不調を何とかしてあげるのと同時に、
どうしたらこの企業の社員がよりハッピーに仕事を楽しみながら成果を上げて、さらに会社として良い結果を出すことができるのか、
それが、どうしても気になって仕方ないのだった。
そこで、メンタルヘルスの第一次予防、つまり、疾病の発生の予防の視点、
さらにはヘルスプロモーションのような視点、
つまり「健康を支援する環境づくり」が自分のなかでは課題となるのだが、
こんな話を理解していただく土壌は企業にはないし、
そこに経費をかける気もない。
そもそも、企業が私に求めるものはそもそもそんなものではなく、
目の前にいる不調者のマネージメントなのである。
そんな中、ある会社から、メンタルヘルスを疾病予防でなく、もっと不調でない社員がより元気に仕事をできるようになる支援ができるような研修をしたい、と要望があった。
そこから私の独学に火がついた。
でも、そのような視点をもつ会社は私の経験では少数派だ。
そもそも人事がメンタルヘルスの対策をしたいといっても、実際に事例が出てみないとピンと来ないし、続出状態では根本対策でなく、対処に追われる。
そのため、根本解決になりうる第一次予防(疾病の発生予防)まで考えていただくことがなかなかできない。
また、そのような研修は「経費」としかとらえてもらえない。
実際にはこのような活動は職場の活性化につながる「投資」になるにもかかわらず、メンタルヘルスという言葉がでるとなんだか福利厚生に成り下がってしまう感じがあった。
インパクトのある、かっこいい研修はウケるのだが、どうもメンタルヘルス
嫌々やっている感がある気がする。
医師としては本当は社員の健康は最重要課題だと思うが、
どうしてもそれを経営陣に押しても、話は進まないのは明らかなのだった。
そこで、少しでも経営陣に対して説得力あるボキャブラリーを得ようと参加してみた。
今日の経営学の面からみた話は大変参考になった。
社員のメンタル面での活性化、職場の一体感など、社員個人、そしてそれを支援する職場というのは、社員の健康だけでなく、部署、そして会社の業績にもプラスになるはずで、それを説明していくのも現場を知る私たち専門家の仕事だと痛感した。
そのための言葉を開拓するためにもこのような研究会に分野を超えて参加することは大切だとつくづく思う。
企業にいる医師としてのraison d'etre がここにあると感じた。