女性の健康の変化:年齢と社会階層の視点から

昨日はバレエのお陰で体が元気になり、夜は英文論文を読んでました。
オーストラリアの女性の身体的、精神的健康の縦断研究です。
オーストラリアはもともと性差医療が進んでいます。
女性の健康に関する研究予算も多いと先日会議で知り合ったChristina Lee先生は話しておられました。
昨日の論文は、社会階層によって、女性が加齢変化のなかで、身体的健康、精神的健康がどのように変化するか、という研究。
まず、社会階層が上の女性のほうが健康度は高いという結果、
次に、年齢を重ねるごとに、身体的健康度は悪化していくが、
精神的健康度は良くなるという結果が示されていました。
55歳以降に精神的健康は良好になるのですが、
これは女性外来でも実感します。
更年期から抜け、子供の自立や定年などにより社会的な負荷が軽減することで説明できると書かれてました。
また、このような年齢による健康状態の変化は、
社会階層によって変化の傾向が異なり、より高い社会階層では身体健康の悪化の傾向が緩やかであり、精神的健康が良くなる傾向が急激である、
つまり、社会階層の上の女性と下の女性で加齢とともに身体、精神の健康状態の差が広まっているとの結果が示されてました。
これらの事実から、社会階層の下の女性の社会経済状態、肥満度や健康に関する行動などの社会環境状態を改善することにより、
早期死亡を減少させることができると言え、
そのため、政策によりこれらの差は修正可能ではないかという内容でした。
ここでは社会階層と表現しましたが、
socioeconomic statusはこのような公衆衛生研究では、海外では当然のように語られます。
日本でも最近「健康格差」などと言われるようになりましたが、
私が10年以上前にパリにいたときには日本では格差を語るのはタブーな感じで、フランスの有名紙「ル・モンド」の第一面に大きく、「職位により異なる様々な病気の有病率」などという研究の結果が掲載されているのを見て驚いた記憶があります。
日本でも格差社会到来と言われてますが、独身女性が増えていくなかで、女性自身の社会階層が変化していきます。
女性の平均賃金は低く、その中で健康的に仕事を続けながら生きていくための方法について、個人的に大変興味をもっています。