うつがメジャーになったのはいいことですが・・・身体疾患を忘れずに

産業医として、女性外来の医師として、最近感じるのですが、
年代差はあるものの「メンタルクリニック」という言葉のライトさが手伝ってか、
心療内科、精神科の敷居が日本人にとって大変低くなっていることを痛感します。
特に20代、30代では「ちょっとうつっぽい」とか「最近やる気ない」いうことですぐにメンタルクリニックに来る人もいます。
早期発見という意味では大変いいのですが、先日こんなことがありました。
ある会社の上司が、40代の女性社員が最近元気がないから、「うつ」じゃないかと言って、
メンタルクリニック受診前にちょうど訪問していた産業医である私の面談を勧めたのです。
大変素晴らし教科書的な流れです。
そこで、職場の定期検診の結果も用意していただき面談しました。
すると、甲状腺の腫脹の記載があるのです。しかし内科受診していないのです。
そこで、まずは内科受診をすすめました。
というのは、甲状腺機能低下により「抑うつ症状」を呈することがあるのです。
翌月に訪問の際に伺ったところ、甲状腺機能低下と診断され、ホルモン補充療法開始したとの話でした。
治療開始してから、うつ症状も軽減しているとのこと。
ホッとしました。
甲状腺機能低下は病院で採血により診断できますが、会社の定期健診には項目が含まれていませんので内科受診しなければならないのです。
以上のように、身体疾患の症状の一部として「うつ症状」を呈することがあることは一般の方も知っておくとよいでしょう。
「いきなりメンタル」ではなくて、まずは内科で診てもらうことが大切なのです。
そこで、器質的問題がないことが分かって初めて「メンタル」と言えることも多いのです。