「先生、うちの○○さんはうつ病ですか」:「事例性」と「症例性」の問題

「先生○○さんはうつ病ですか」
と上司や人事から質問されることがよくある。
私は産業医としては診断する場ではないので、また、境界線の方もいらっしゃるので線引きはできるだけしない。
身体と心の問題は切り離せるものではなく、
さらに、どちらも原因と結果になりうるのがストレス性のメンタルの疾患の特徴である。

また、職場で問題になるのは「事例性」である。
休みがち、仕事の効率が落ちた、周囲とのトラブルが多いなど、
「実際に生じている問題を捉えること」が大切である。
一方、「疾病性」とは症状や病名に関することだが、上司や会社は当該社員が病気か正常か、統合失調症うつ病か、などと精神医学的な診断や疾病の存在の有無に焦点を当てる傾向があるがこれはあまり意味がない。

本人や周囲への影響を判断し、場合によっては精神科の受診勧奨、職場での労務調整するのが職場の役割である。
職場は「事例性」を意識していくとうまくいく。
また、職場で疾病性の考え方が強まる場合、職場での社員のメンタル対応の向上とは逆に、「病気か否かのレッテルを貼り」が加速することもあり注意しなくてはならない。