人事担当者へ:産業医面談の有効な時間の使い方

産業医だけでなく、臨床医としても一人の患者(社員)様との面談時間についてはいつも気を使う。
特に産業現場では、人事の方が社員のスケジュールもあるとのことで、
ぴったり15分や20分で終わらせてほしいと言われることもある。
臨床でも時間のかかる患者様と、安定しており診察がすぐに終わる患者様がいらっしゃるように、
産業現場でも、メンタル対応の場合はじっくりお話を聞かないと見えてこない方、
すでに問題は解決して経過観察中の方、様々な方がいらっしゃる。
その中で、一人15分で終わらせて下さいとなると困難なこともある。
社員様の仕事の都合で仕方ない面もあるが、人事の方が一言、時間が前後することがあることを面談者に予告し、
可能な限り、よりフレキシブルな時間設定をするほうが産業医としては助かる。
嘱託産業医の場合、月2時間のみの訪問という会社もあり、その中で、可能な限り予約をたくさん入れました!
今日はたくさんいらっしゃるので速くして下さい!
と言われることもしばしばある。
しかし、私の考える企業における産業医面談の効果というのは
面談事業の企業への効果=��(産業医の個々の社員についての理解度)⁴
である。
産業医面談における社員の問題や症状についての理解度の4乗の和が、「面談事業の効果」のようなイメージだ。
つまり、ある月に面談をのべ5回(5人)実施し、個々の面談で社員についての産業医の理解度が0.9だった場合は、
0.65*5=3.25程度が事業効果になるが、
理解度が0.5だった場合は0.3程度となってしまう。
10倍の差がでるのだ。
産業医にたくさん会っていただきました!というのはもちろん、
産業医がいるということを周知徹底する上では効果的だと思う。
しかし、「テーマ」がある社員様とはじっくり向き合わないと、
メンタルヘルス事業としての効果は発揮できなくなる。
また、もう一つ面談効果を上げるために重要なことは
人事担当者が事前に各面談の目的と経緯を産業医に説明することである。
診断書の有無、勤務状態、面談のきっかけなどについて、
また、面談の効果を上げるために、この面談で人事として何を知りたいか、
職場環境要因があるかどうか知りたいとか、単に体調を知りたいだけか、
復職の見通しを知りたいか、などなど
面談の目的をレクチャーしていただくだけで面談の効率は格段に上がる。
もちろん、産業医は医師なので守秘義務があるため、社員の許可を持って人事に話をすることにはなるが、
社員と会社が問題点を共有することによって、
双方にとって有益な面談となることも多い。
しかし、事前説明なく、到着するなりすぐ面談!となると、
産業医が一から話を聞くことになり面談時間の有効活用ができない。
今回書いた内容は、かなり基本的なことだが、実はなかなか実践できていない会社が多い。
現在に至るまで20社ほどの産業医をしてきたが、
そこで出会った数十人の人事担当者の顔が目に浮かぶ。
医療関係者でもない人事担当者が、突然産業医の対応、特にメンタルの対応を、といわれても困惑するのは無理がない。
メンタル対応が多い時期には、人事担当者が疲弊していく姿もしばしば目にしてきた。
今回書いたことは、実は研修医や看護師に求めるようなことに似ていると
書いてから気づいた。
事前準備についても手順もわからず模索している方が多く、日常業務の合間に本当に大変だと思う。
このような悩みを抱える人事担当者が、
もう一度産業医面談の手順について考え直し、より効果的な方法を取れたらと思う。