保育園難民:女性が就業継続は難しい、M字カーブはまだまだ続く?!

新聞記事をみて保育園難民のことを書きたくなりました。

最近、産業医として人事の方から子育て女性の葛藤について相談を受け、また研修を依頼されることが増えてきました。
私は保育園難民だったころの辛い経験から世の中を変えようなどと立ち上がれるほど強いタイプではないため、
当時のことは、ひどいトラウマになっていて人前で口にするのを避けてました。
しかし、そろそろこの分野についても自分なりに消化して悩みの多い子育て女性に伝えていくべき事かと思い少し書いてみます。

私の場合、娘の保育園は4回転園し、その後は雑居ビルの小さな保育園しか入れない状況になり、幼稚園お受験までする結果になりました。
本当に必死で毎日追われるような日々でした。
実に時間とお金の管理が全てでした。
こうして書いているだけで当時の焦燥感を再体験してしまいます。
また、心理的側面で辛かったのは、19時のお迎えが当時通っていた託児所では一番遅いお迎えで、娘の「もっと早くお迎えにきて」という言葉です。お迎えの度に胸が痛みました。
少し具体的に自分の経験を書いてみます。
私はパリで出産した後、帰国して大学の研究室に戻る予定でしたが、保育園はどこもいっぱい。
まだ大学院生で研究の傍ら医師としてバイトをしていたため、高額な民間の保育園に入れると、夜が遅い私は月額20万円以上するので躊躇していました。
当時はネットで自治体の保育園情報など検索できなかったので、パリとの時差のため朝5時ごろ起きて電話で都内23区全部に空き状況を問い合わせました。
結果、2区だけ空があり二次募集に参加できそうなことがわかり、急いで一人でまず帰国。
二次募集で当選するとは限らないので「区立保育園に当選したら通える場所」かつ「空きのある民間の保育園に歩ける距離の場所」にマンションを探しました。
当時品川駅から広尾まで歩いて、バギーで通れる道かどうか確認して歩きながらマンション探し。
たとえば桜田通りなど歩道橋を毎日バギーでわたるのは難しいものですから、渡らずにすむところに、民間と区立の保育園を見つけ、その近くにマンションを借りる、というものです。
といっても、当選するかは不明ですから、綱渡りです。
結局、マンションを借り、無事区立保育園も当選。大喜び。
しかしそれもつかの間、18時までの預かり。さすがにそんなに早く仕事は終わりません。
毎日ベビーシッターのお迎えになり、それだけでも10万円程度はかかります。
医師の勉強会や研修会は平日の夜のあることが多いのですが、参加すれば時給1500円から2500円くらいが飛んで行くのです。
だんだん行けなくなってしまいました。
知人の女医さんで実に活躍している方はベビーシッターに40万円くらいは当たり前に支払うと言っていました。
まるで流水算?!のような勘定になるのです。どうやって食べていくのか・・。

また、私は子育てのため転職もしたので2年間に計4回ほど引っ越しをして
そのたびに保育園難民になり、そのうち認可保育園には入れなくなり、東京都の認証保育園や民間保育園、民間の保育ママ、ベビーシッターの利用して何とか生き抜いていました。
総額幾ら使ったかわかりませんが、若い時期にこの出費は痛かったのは確かです。
時間とお金のマネージメントのための転職もしました。

フランスでは、私のお世話になった教授の奥様も公証人としてキャリアを積んでいましたが4人の子供をベビーシッターと育てていました。
そのお宅に何度か招待されましたが、余裕ある大人の世界を維持したまま子育てをしているのです。
フランスでは大臣も女性が多く当然のように二人以上子供がいます。

どうしてフランスのキャリア女性が子育てしやすいのか。
まずは、アフリカ系移民の多いフランスではベビーシッターの代金が安いこと、
さらに、詳細は調べてませんが、所得税の控除があるとのことでした。

これは、女性の就労において大きなポイントになると思います。
「サラリーマン控除」と同様に、配偶者扶養になっていない子育て中の女性に対しては「子育て経費控除」は理屈でいえば当然のことでしょう。
ベビーシッターは仕事に行くための「必要経費」として当然なはずですが、日本の年上の男性にこの話をしたところ、これは「贅沢消費」だと切り捨てられました。日本男性の意識改革がまずは必要なのかもしれません。
さらに、「ベビーシッター代=妻の税引き後の収入」だった場合に、妻のキャリアのために就労継続を許可する男性が日本にどのくらいいるのでしょうか。

私はフランス社会のなかで、子育てが女性にとってごく自然で、女性が犠牲になることなくできると思っていたので家庭や子供を持つ自信ができ、
思いきって子供を持ちましたが、帰国後の展開を予想できたらやめていた、そんな気がします。
今や子供はかけがえのない存在なので、この誤算に感謝しないといけませんが、
予定していたキャリアは積めませんでしたし、子供がいながらでもできる仕事を探して、子供が寝るのを待っては、
夜中に勉強しながら自分なりの道を進んできました。
もちろん、子育てをしながらキャリアを積み、管理職になる女性が増えていくことが社会としては望ましいと思います。
しかし、会社の中で様々な女性社員の面談をしていると、私のような独自の特殊なキャリア展開になったときに、
そのような紆余曲折を楽しみ、焦らず様々な場面で常に学べるような心の余裕が必要なのだと実感してます。