メンタルヘルスと人事管理

メンタルヘルス対策は、労災リスクマネージメント、コンプライアンスという意味合いで「会社の義務」として実施している感じがします。
しかし、メンタルヘルス対策に限らず、
ヘルスケア(健康管理)は企業にとって「ヒト」という大切な「資産管理」に近いと産業医の私は感じています。
従業員を資産というと語弊があるかもしれませんが、
最近の企業は「生身のヒトを育てる」「損なわない」ようにして
「価値を上げる」という視点が欠けているのではないでしょうか。
「消耗品」のように使用しているように見えることもしばしば。
先日「昔のような面倒見のいい上司がいればEAPのような相談システムはいらない」とある会社の人事が口にしていました。
確かに、高度成長からバブル時代の日本企業は
部長、課長クラスが管理職として部下を仕事から結婚まで包括的に管理していたものです。
それも窮屈な気はしますが、そのお陰もあってか、男性未婚者は今ほど多くなかったし、メンタル問題もほとんどなかったのです。
現在では部長、課長自身も一プレーヤーとしての成果を求められることが多いと耳にします。
そのため、なかなか部下の面倒まで見れないとつぶやく上司。
面倒が見れないとつぶやくならいい方で、
部下のメンタルの病気の管理責任が自分にあることすら気がつかず、
他人事のように思っていて、さらに部下を追い込んで行く上司もいるので驚いたこともあります。
このような状況で従業員が仕事で不具合があっても誰にも相談することもできず、
悩みが膨らみ独りストレスを溜め込む、また、自身の健康管理も壊滅的状況であることが往々にしてあります。
工場などの現場では相変わらず家族のような付き合いを目にしますが、それは例外的な存在となってしまったのでしょう。
メンタル対策については、メンタル病名入りの診断書をもらって、初めて対応を考える会社が多いのが現状です。
しかし、普段の人事管理にも、メンタル疾患への対応や社内コミュニケーション向上の視点をもち、
ラインケア、つまり管理職教育や情報の徹底など、予防から始めて行くのが本当は理想なのです。