腰痛について

日常の外来で腰痛を訴える患者さんは多い。
私は整形外科医ではないので、腰痛を主訴とする患者さんを最初からみるわけではありません。

しかし、私が出会う腰痛の患者さんのパターンは、うつ状態から腰痛の訴えが出てくるパターン、腰痛の患者さんが整形外科では器質的には異常がない、と診断され心因性を疑われ紹介されるパターンなどです。

今日は、腰痛の考え方を紹介します。

まずは、福島県医大の菊地臣一先生の分類を紹介します(詳細は省略)。

1、器質的要因による腰痛

1) 脊柱とその周辺組織に由来する腰痛
椎間板ヘルニア、リウマチなど

2)脊柱以外の臓器に由来する腰痛
子宮筋腫などの婦人科系疾患
膵臓炎、直腸癌などの消化器系疾患
尿路結石
変形性股関節症などの整形外科疾患

など

2、非器質的要因による腰痛

精神医学的問題:身体表現性障害、気分障害など
心理社会的問題: 家庭内不和、職場の問題など



腰痛は今までは「脊椎の障害」というとらえ方をされていました。
しかし、実際は上記のように様々な原因から腰痛が生じることが指摘されてます。
ここで注意しないといけないのは、「腰痛」と言えども、
整形外科的疾患以外の病気の可能性もあるということです。
内科的疾患でも腰痛は生じます。

さらに、腰痛は心理的な問題と深く関わると言われています。

そこで、「生物・心理・社会的疼痛症候群」という概念でとらえる動きがあるそうです。

様々な研究により、腰痛が、仕事のストレスや満足度、またその人の気分障害度(抑うつ、不安など)と関連していることが証明されています。

実際、私の患者さんにも、うつ状態が悪い時、出社困難を訴えるときは、
腰痛も訴える方がいらっしゃいます。
心理的なものかも知れませんが、整形外科に紹介状を書きましょうか」と聞くと
大抵は「それほどではないのです」とこたえます。
「では、痛みが悪化したり続くようなら整形外科に紹介状を書きましょう」と言っているうちに
訴えもなくなり、腰痛も消失していることもしばしば。

このように、腰痛と心理・社会的因子が深い関係があることが指摘されていますが、
実際に整形外科受診の腰痛患者の器質的病変と腰痛との相関係数は0.27とWaddellが証明しています。
かなり相関が低いのです。
つまり、腰痛には器質的な病変以外の要因が関与していると思われます。

そういえば、作家の夏樹静子さんも腰痛で休まれてましたが、確か心因性でしたね。

最後に一つ、注意していただきたいのは「心因性」というと、
「気のせい」「気のもちよう」と思われ、「気合が足りないのか」と思う方もいらっしゃいます。
しかし、当の本人は本当に痛みに悩まされているのです。
そこが詐病とは違います。
それだけはご理解の程、よろしくお願いします。