職場のメンタル問題 2

今日は職場のメンタル問題について

メンタル不調について、実際に産業医をしながら、よく問題となるポイントを示します。あくまでも私の経験からなので、他に何か興味深い例があれば是非教えていただけたら幸いです。

① メンタルは長期療養者が多く、休職が長引き休職期間満了に至るケースが多い。

休職可能な期間は各会社、各従業員マチマチであり、就業規則で規定されている。一般的にメンタル不調の者の療養期間は長い。平均休業日数は非精神疾患では47.3日であるがうつ病を始めとする精神疾患では119.5日である。また、うつ病のうち25.5%は職場復帰後の転帰が不良であるというデータもある。ただし、実際臨床に携わると、メンタルの患者さんの転帰というものは本人の生物学的、心理学的要因以外にも社会学的要因も深く影響される。つまり、周囲のサポート、すなわち家族や会社の疾病に対する理解や寛大さによって患者の予後も変わってくることがわかる。つまり、他の疾患に比べて単純に「生物学的にうつの4人に1人は予後が悪い」と言い切れないことを実感する。
いずれにせよ、うつの予後が悪い者が4人に1人おり、その場合に休職満了になるケースにあうことがある。私は人事の者ではないので、産業医になって知ったのだが、休職期間は会社によっていろいろ。3か月から数年まで...といった感じだ。老舗の大企業ほど長い
という印象である。
休職満了になった場合は無理にでも復職するか(主治医の許可がないとだめだが)、自然退職に至る。退職という選択は本人、家族にとって大きな選択なため、問題となることもある。主治医から就労可の診断書をもらってきたけど、産業医として私が会うと、どう見ても仕事どころではない、というパターンもある。産業医として就労の可否を判断しないといけない辛い場面である。

② メンタル休職者の復職の可否

①にあるような長期療養でなくても、一か月自宅療養していた者が、朝からきちんとしごと起きて仕事に行くのは大変なこと。
「120%回復していないと復職はできない」とよく言われる。
復職前に、自宅で出社に間に合う時間に起床できるか、昼寝しなくても大丈夫か、外出できるか、電車に乗れるか、寝付きはいいか、などなど、生活リズムが整っているか確認してから復職が可能になる。また、出社してもいきなりフルタイム勤務は厳しいので、「リハビリ出勤」で一定期間は午前のみの出勤にするとか、午後のみにするなど、本人の状態を見ながら判断する。最近は、病気の前より昼夜逆転している者も多く朝が苦手な場合もあり、午後出勤をリハビリに勧めることもある。
ただ、会社によっては、フル出勤で残業もできなければ要らない、などという場合もありその場合は当該社員の復職は遠のいてしまう。

③ メンタル不調の原因が客観的にみて会社にある、または当該従業員が主観的にそう感じているため、会社への不信感が強い。

会社へのクレームを聞くことも多い。実際にパワハラやセクハラもよく聞く話である。一方、実際にひどい待遇でないのに、その人が怒り爆発のこともある。
最近は社内のコンプライアンスの部署に弁護士を置くこともあるので、そちらで解決することがある。いずれは、医師と弁護士の連携なども必要になるかもしれない。

④ 診断書の読み方がわからない。

メンタルの病名は「自律神経失調症」「抑うつ神経症」「うつ病」「適応障害」「身体表現性障害」など、見慣れない病名、違いがわかりにくい病名がある。
最近はネット検索できるので患者さん自身が、この先生とあの先生で診断名が違う、と訴えてくることも多い。メンタルの病気は診断する時期や医師によって診断名が異なることも多く、どれが正解というものでもない。この辺を説明するのに苦労することが多々ある。

以上、今日はメンタルトラブルを列挙してみました。
こんな世界があるのか、と思う方、実際人事部などで経験する方、いろいろだと思うが
ご参考に!