職場のメンタル問題 1

私は複数の会社で産業医をさせていただいている。
今までに関わった会社は10社を超える。分野でいえば、製造業、IT企業、海外ブランド、不動産、土木関係、販売チェーンなどなど。規模も50人程度から数千人規模の会社まで。
最近はどの会社でもメンタルの問題を抱えている。その傾向が顕著になったのは2000年ごろからか。
なぜ会社においてメンタルの問題がこれほど増えてきたのだろうか?
今日はこの辺りを整理してみる。

①肉体労働から頭脳労働へと職務内容が変化
これは労働による疲労が肉体的なものから、精神的なものに変化してきたということだ。実際、IT化で便利になった分、仕事が加速し、それについていける者と脱落者の格差が広がり、精神的な負担は大きい。

② 給与体系の変化 年功序列から成果主義
成果主義は導入当初は会社と社員双方から期待される制度だった。
しかし、成果主義により年俸制になる会社が増えたことから、実際私のところに相談に来て成果主義の不公平を訴える者が増えた。その内容は、自分の評価が不当で仕事の意欲が低下した、年俸制になったが、実際の労働時間が前より増えたが残業代がない、など。もちろん会社側からみれば効率があがるというメリットはあるが、実際、仲間意識が低下した、仲間同士で協力することが減ったという問題を認識している会社もある。連帯感の欠如は会社にも不利益があるように思われる。
メンタルトラブルの主な原因は、「過重労働」「人間関係ストレス」であるが、これは成果主義の問題と深く関係する。

③経営の多角化による働き方の変化
企業の海外進出に伴い、海外出張や海外赴任が増加。また、グループ企業への「出向」。そしてよく言われる「派遣」という働き方。
海外渡航中にうつ病躁うつ病を発症することはよくあることだ。海外生活は言葉の問題や友人がいないなど精神的なストレスになる。また、私がパリにいたときによく耳にしたのは、日本からくる会社の「お偉いさん」を頻繁に接待しないといけないというもの。「海外にいる」というだけで、会社の上層部の接待を、接待慣れしていない職種の者がやらないといけないことがあるのだ。それが大きなストレスになるというもの。私自身経験あるが、パリで、そこに訪れた者に日本の利便性、完璧さ、時間厳守を求められ、非常に苦労した。文化の違い、生活様式の違いは国によりそれぞれ違うのに日本を基準に評価され、段取りが悪いなどと責められた。

以上、今日はメンタル問題の背景を記した。

ではこの辺で。