生活保護未受給229万世帯 

昨日の新聞記事にあった。

低所得世帯の68%とある。受給資格ある可能性があるにもかかわらずしていないとみられる世帯数だ。この数字には、受給を断られた者、受給意思がない者いろいろだろう。詳しい内容は知らない。

私のように医療現場にいると様々な人々と出会う。大学卒業までは、ある程度の教育を受け、それなりに恵まれた人々に囲まれて生きてきた。
私の高校時代の友人で医学部進学した者以外は、今も同じくいわゆるエリート集団の中だけで切磋琢磨している者が多い。彼らは、限られた人々とビジネスを行い、利益追求なり、名誉追求に奔走し、上昇志向も強い。
 
一方、医学部に入った者は大学卒業まではエリート集団の中で生きていくわけだが、世間が思うほどかっこいいものでもなく、エリート集団しか知らない、では済まされない。大学病院から一歩離れれば、社会経済的に恵まれない人々と接する機会が多い。先日、今は自由診療でバリバリにオペをして、華やかな生活をしている眼科医の友人と話したときも、下町の病院で仕事をしていたころに、目やにを訴える患者さんの話をよく聞いてみたら1週間ほど顔を洗っていなかった、という経験があるという話を聞いた。点眼薬よりまずは洗顔指導が必要だったりするのだ。私も医師になって市中病院で研修したときはカルチャーショックを受けた記憶がある。
 生活保護の問題で印象に残った出来事は保健所に勤めていた時代にクリスマスイブのホームレス健診のときだった。公園に住むホームレスの方々の健診を自治体の事業として行う。健診会場には生保の手続きがしやすいようにとの配慮で福祉関係の職員もいた。私が診た患者さんは50代の男性で前立腺がんだった。腹痛で夜も眠れずに辛い、と訴えていた。せめて暖かい住む場所でも、と生保を強く勧めたが「他人様にお世話になるなど申し訳ない」と言って受け入れない。何とか布団の上で最後を迎えてほしいと願った。
 
 人間やむを得ない状況というのはあるもので、そういうときは他人に助けてもらってもいいのではないか。そのことをどうしたらその人に伝えられたのか、当時は真剣に悩んだ。