健康豆知識 ① kissing disease キス病


先日、私の患者さんが「先生、EBウイルスにかかって大変だったんです」と言ってきた。50歳の女性。思わず「えーっつ?!」と叫んでしまった。彼女は高熱のため私の外来を一回お休みしていた。その理由がEBウイルス感染だったのだ。

EBウイルスの感染により発症する伝染性単核症は、kissing disease キス病と一般的には呼ばれている。ネーミング通り、一般的に唾液を介して人から人に経口感染するもので、アメリカではファーストキスの年代に感染する可能性が高いと言われている。症状は、高熱とのどの痛み。ひどいと肝機能障害がでる。彼女も高熱と、肝機能障害でだるくて辛くて大変だった、と語った。

しかし、このEBウイルス、日本では80%が3歳までに感染していたため、最近まで若者が罹ることは少なかった。幼少時に罹ると軽くすむので、ふつうの風邪として扱われることが多い。そういえば大学時代に同級生が罹ったときに、みんなで囃し立てた記憶がある。なぜ50歳の女性が?と、目の前の彼女が乙女に見えてきた。それにしても不思議だった。

以前、私たちがEBウイルスに罹っていた可能性が高いのは、母親の唾液が子供の口に入る機会が多かったためだと思われる。しかし、今や母からの口うつしなどしない家庭も多く、大人になってからキス病に罹る人が増えているのだ。
虫歯の心配もあるものの母親の唾液がついた食べ物を少しは食べさせた方がいいのかもしれない。