季節性うつ病

秋から不調になり、ついに休職に入る方が増えています。
産業医としてフォローしておりますが、数年のお付き合いになると秋が要注意だとわかる社員がいらっしゃいます。
朝起きられない、何とか出社しても眠気が取れず、頭痛など身体症状が出るなどの症状ですが、春から夏にかけては症状が軽減し復職できるのです。
季節性うつ病については、私は15年ほど前にフランスで知りました。
当時はまだ日本では、精神科以外の医師にはあまり知られておりませんでしたが、フランスではメジャーな疾患でした。
ヨーロッパの国々は秋分の日を越えると急激に日照時間が短くなります。
緯度でいうと東京とスペイン南端が同じくらいなのでほとんどのヨーロッパの地域は日本から見れば日照時間からいうと「北国」です。
私自身、最初は勉強に忙しくて落ち込む暇もありませんでしたが、妊婦になって自宅で生活するようになってからは耐え忍んでました。
どんよりとした曇り空が続く上に朝は8時過ぎにやっと少し明るくなり、16時には暗くなってしまうのですから。
そこで、季節性うつ病の話を聞き、納得したものです。
当時、Sainte-Anne病院で光療法を実施していることを知りました。
起床困難の季節性うつ病の人に特別なヘルメット(蛍光灯がついたもの)を被らせるのです。
大変驚きましたが、効果が高いようです。
以下、Royal College of Psychiatristsのホームページを引用しますが、効果が高いと現在の評価されています。
自分でできるものですが光療法は有効性が高く評価されてます。
内容は、事務用の蛍光灯ランプを浴びる、日中はなるべく外にでる、などですが、
詳細は以下の記事で確認して下さい。
朝がつらい人は是非試して下さい。


(記事の内容)
一番良い治療法はどれですか
症状が軽いならば、ここで説明したセルフ・ヘルプの方法を試してみてください。たいていの場合、十分に効果があります。
症状が重い場合、ライトボックス抗うつ薬、いずれかの治療がまずは行われます。どちらの治療法を選ぶかは、その方法が可能であるかどうかや、続けやすさ、本人の好みによる場合が多いです。

光療法と抗うつ薬を比較した研究はまだ少ししかありませんが、どちらの治療法でも同じくらいの効果が得られるようです。光療法、抗うつ薬のどちらかで十分な効果が得られない場合には、併用することも可能です。

季節性感情障害 (SAD)

季節性感情障害(SAD)とは?

SADはうつ病の一種で、秋または冬に抑うつが始まり、春や夏になると治まるという特有のサイクルを繰り返します。このため「反復性冬季うつ病」と呼ばれることもあります。

SADにみられる症状の多くは、季節性ではない普通のうつ病と同じです(うつ病リーフレットに詳しい説明があります)。うつ病の症状には次のようなものがあります:
気分が落ち込む(午前中のほうが症状が強い)
気力がなくなる
元気が出なくなる
生きる張り合いがなくなる
物事を楽しめない
イライラする
人と会いたくない
性欲が減退する

しかし、SADには、普通のうつ病とは少し異なる症状もあります。非季節性のうつ病においては、眠れなくなり食欲もなくなるのが一般的ですが、SADの場合は、睡眠時間が長くなり食欲も増すことが多いです。

SADになると、冬の間、朝起きるのがとてもつらくなり、日中にも眠気を感じることが多くなります。またチョコレートや白パン、甘いお菓子といった高炭水化物の食品が食べたくてたまらなくなることがあります。SADを持つ人は運動量も低下しがちなため、冬に太りやすくなります。

SAD型のうつ病は春になると回復します。そしてSADを持つ人の約3分の1が、春から夏にかけて気分がやや高揚した状態(軽躁状態双極性障害リーフレットを参照)になります。

SAD に罹りやすい人は?

他の型のうつ病と同様、SADは妊娠可能な年齢の女性に最も多く見られます。女性のほうが男性より約3倍罹りやすいといわれています。子どもや年配者がSADになることもありますが、きわめて稀です。

赤道近くに住む人が罹ることは少なく、赤道から離れるほどSADを患うリスクは高まります。

SAD に罹る割合はどのくらいですか?

冬になると、多くの人に軽い疲労感や睡眠時間の増加、体重の増加といった体調の変化が見られます。動物の冬眠に少し似ています。しかしこうした症状が日常生活に支障をきたすようならば、それはSADであると考えられます。英国では100人に3人が深刻な冬季うつ病に悩まされています。

SAD の原因

単に冬場の日照時間不足が原因であると考えられています。現代の生活では屋内で過ごすことが多く、日光に当たる時間が少なくなっています。光が不足すると脳内でセロトニンの分泌が減り、そのためにうつ病になりやすくなると考えられています。

SAD による悪循環

SADの症状の中には、さらなる問題を生んで「悪循環」を引き起こし、症状を悪化させるものがあります:
いつも疲れていて、何もしたくなくなります。運動不足がさらにうつを悪化させることがあります。
食べる量が増え、太ってしまいます。
眠気、やる気のなさ、イライラといった症状は、家庭や交友関係、仕事の上でのトラブルの元になりかねません。また、やるべきことがあってもそれに取り掛かかることができず、さらなるストレスを感じることがあります。

こうした「悪循環」がひどくなる前に、次に示すような自分でできる治療法を試してみましょう。

SAD への対策

自分でできること

軽度のSADならば、大抵の場合、ここに挙げるセルフ・ヘルプ(自助)の方法でよくなりますが、重症のSADに対しても同様な方法を行うのがよいとされています。
日照時間の短い時期にはできるだけ屋外に出て、日光に当たりましょう。
普段から行なっている運動を続けましょう。よく日に当たれるよう、屋外で行なうのが最善です。
家族や友人に相談して、理解と協力を得るようにしましょう。
「クリスマスが過ぎれば日も長くなるし、春はもうすぐ」と自分に言い聞かせましょう。

光療法

ライトボックス(人工光)を使用して、冬季の日照不足をを補う方法です。照射される光は太陽光に似ていますが、紫外線は出ないので肌や目に害がありません。

秋に症状が出始めたら、毎日30分から1時間、ライトボックスを使用しましょう。朝食時の使用が最も効果的です。光療法の効果は現れるのがとても早く、この療法が有効である場合は、ほとんどの人が最初の1週間で症状の改善を実感します。

光療法の副作用はあったとしても軽度です。人によっては頭痛や吐き気、目のかすみなどの症状が出ますが、ライトボックスからの距離を長めにすれば、これらの症状は軽くなります。ただし離れ過ぎてはいけません。目とライトボックスとの距離がありすぎると、治療に必要な明るさが足りなくなり、同様の効果を得るためには、ライトボックスの使用時間を長くする必要があるからです。また、夕方5時以降はライトボックスの使用を控えた方がいいでしょう。寝つきが悪くなることがあります。
光目覚まし時計も治療に使われます。起床時刻の約1時間前にライトがほんのり点灯し、それが徐々に明るくなっていき、人工的に夜明けのような状態を作ります。起きるのがつらい冬の朝に特に効果があります。
以下のような光治療器もあります:
デスクワークをする人のための卓上ライトスタンド
ライトバイザー:野球帽のような形をしていて、つばの裏についた小さなライトで目に光を照射します。

薬物治療
SADの治療には一般的に抗うつ薬が有効です。疲労感や眠気が増す薬は避けるべきなので、こうした副作用の少ないSSRIという種類の抗うつ薬が主に使われています(抗うつ薬リーフレットに詳しい説明があります)。中でもセルトラリン、Citalopram(訳注:日本では発売されていません)やFluoxetine(訳注:日本では発売されていません)の内服には優れた効果が認められています。SADの場合、秋に抗うつ薬を飲み始め、春になったらやめるのが一般的です。

認知行動療法(Cognitive Behavioural Therapy; CBT)
冬季うつ病の治療と再発防止には、CBTが効果的であるとする研究結果もあります。

(Royal College of Psychiatristsのホームページより)