つまらない映画を見続けるか:サンクコスト(埋没費用)について

ある患者さんの話。
テレビで元オリンピック選手の為末大さんが「諦める力」について話をしていたとのこと。
私もその患者さんもその本は読んでいないのですが、
どうも40歳を過ぎてもオリンピックに出たいと思っていつまでも他の道を選択できずに
いるのは勿体ない、その力を他に使うことを考えた方が有益だとの内容らしい。
(間違っていたら御免なさい)
そこに同席していた経済学者が
「それはサンクコストですね」
とコメントしたらしい。

サンクコストの概念について改めて考えてみました。
サンク・コスト効果とは、人が行動した結果、その際に生じたコストが、後の意思決定に影響することを言います。


ウィキペディアに出ている例をコピーしておきます。

例1:つまらない映画を見続けるべきか[編集]

2時間の映画のチケットを1800円で購入したとする。映画館に入場し、映画を見始めた。10分後に映画が余りにもつまらないことが判明した場合に、映画を見続けるべきか、それとも途中で映画館を退出して、残りの時間を有効に使うべきかが問題となる。
映画を見続けた場合:チケット代1800円と上映時間の2時間を失う。
映画を見るのを途中で止めた場合:チケット代1800円と退出までの上映時間の10分間は失うが、残った時間の1時間50分を有効に使うことができる。

この場合、チケット代1800円とつまらないと感じるまでの10分が埋没費用である。この埋没費用は、上記のどちらの選択肢を選んだとしても回収できない費用である。したがって、時間を浪費してまで、つまらないと感じる映画を見続けることは経済学的に合理的な選択ではない。途中で退出して残りの時間を有効に使うことが経済学的に合理的な選択である。しかし、多くの人は「払った1800円がもったいない。元を取らなければ」などと考え、つまらない映画を見続けることによって時間を浪費してしまいがちである。



皆さんは、この場合に映画を見続けますか??

ここで投資の選択、人生の選択について当てはめると、いろいろな考え方が浮かぶのです。
診療や研修のなかで
「何か問題が生じたと思ったときどう捉えるか、様々な考え方をしてみましょう」
という話をするのですが、サンクコストの視点で考え方のオプションを出すのも面白いものです。
この会社に居続けるべきか、今の恋愛・結婚を続けるべきか?
私は、様々な岐路に立った方と話をすることが多いのですが、
その人の持って生まれた性格や仕事をしている業界によって考え方は勿論まちまちです。

投資の世界では、
「その株を買った価格に人は左右されがちだが、今後その株が上がるかどうかの客観的評価で
行動を決定しなければならない」と言われています。
株が下がったときにそこで買い増して、再び上がるのを期待するのは人間の心理ですが、それがバクチにはまる心理状態です。最悪の場合、壊滅的な打撃を受けるのです。

人間は、現状を、必ずしも客観的、かつ正確に評価し、行動に移せるわけではありませんが、このような視点も必要でしょう。
損切りできない株」と「腐れ縁」は似ています。

ちなみに、私の性格からすると映画を見続けることはなく、諦めて映画館を睡眠の場にしてしまうか、他の楽しいことに改めて時間とお金を投資し、映画より楽しくするべく努力するでしょう。
しかし、最近はもういい大人なのだから、少し我慢し気を長くもつのも必要か、と学習してきました。
よって、自然に睡魔に襲われるまで30分くらいは見るつもりで映画館にいてもいいかと思ってます。